ベトナム・ハノイ発祥。自宅で淹れるエッグコーヒーのレシピ

朝夕に涼しい風が吹き始める9月。初秋の気配を感じるころ、温かくて濃厚な一杯が恋しくなります。 ベトナムの首都ハノイには、まるでティラミスのように甘く、そしてほろ苦いコーヒーがあります。「エッグコーヒー(Cà phê trứng)」と呼ばれるその一杯は、冷たい風が吹き始める季節の朝を、静かに温めてくれます。 今回は、自宅にある道具で淹れるエッグコーヒーのレシピをお伝えします。
1946年のハノイ。牛乳の代わりに生まれた知恵
エッグコーヒーの歴史は、1946年のハノイに遡ります。 当時のベトナムは第一次インドシナ戦争の最中にあり、新鮮な牛乳は非常に手に入りにくい貴重品でした。ハノイのホテル「ソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイ」でバーテンダーを務めていたグエン・ザン氏は、牛乳の代わりになるものを探していました。 そこで彼が思いついたのが、手に入りやすかった卵とコンデンスミルク(加糖練乳)を使うことでした。卵黄とコンデンスミルクを長時間かき混ぜて空気を抱き込ませ、カスタードクリームのように仕立てたものを、濃く抽出したコーヒーに乗せたのです。冷蔵設備が十分でなかった時代、長期保存ができるコンデンスミルクは理にかなった素材でもありました。 この工夫から生まれた一杯は、のちに「ザン・カフェ」として独立した彼の手によって、ハノイの街で70年以上にわたり愛され続けています。
エッグコーヒーを淹れるための材料と道具
自宅でエッグコーヒーを淹れるために必要なのは、特別な道具ではなく、空気を含ませるための少しの根気です。 以下の表に、1杯分の分量と必要な道具を整えました。
| 材料・道具 | 分量・仕様 |
|---|---|
| ドリップバッグ(または焙煎豆) | 10g〜12g |
| お湯 | 120ml(温度は90℃) |
| 卵黄 | 1個 |
| コンデンスミルク(加糖練乳) | 20g(大さじ1杯強) |
| ハンドミキサー(またはミルクフォーマー) | 1台 |
| ボウル | 1個 |
手動の泡立て器でも作ることができますが、数分間力強く混ぜ続ける必要があるため、電動のハンドミキサーや小型のミルクフォーマーを用意することをおすすめします。それらがあれば、手順が非常に静かで滑らかに進みます。
ティラミスのように仕立てる、エッグコーヒーのレシピ
材料が揃ったら、抽出の準備に入ります。コーヒーが冷めないよう、エッグクリームを先に仕上げておくことが、美しい二層を作るための作法です。
- 卵黄とコンデンスミルクを合わせる ボウルに卵黄1個と、20gのコンデンスミルクを入れます。卵白は使いません。
- 白っぽく、もったりとするまで泡立てる ハンドミキサーを使い、ボウルを少し傾けながら空気を抱き込ませるように混ぜ合わせます。濃い黄色だった卵黄が、白っぽく淡い色に変わり、持ち上げたときに跡が残るほど「もったり」としたクリーム状になるまで、2〜3分ほど混ぜ続けます。
- コーヒーを濃いめに抽出する あらかじめ温めておいた耐熱グラスやカップに、90℃のお湯120mlを使ってコーヒーを抽出します。通常よりも湯量を20mlほど控えめにし、少し濃いめに淹れるのが、甘いクリームとの対比を引き立たせるコツです。
- エッグクリームを乗せる 抽出した熱いコーヒーの上に、先ほど泡立てたエッグクリームをスプーンでそっと乗せていきます。空気をたっぷりと含んだクリームはコーヒーに沈むことなく、グラスのなかに美しい二層の景色を描き出します。
秋の気配が深まる朝に、静かに味わう
エッグコーヒーは、上層のクリームと下層のコーヒーをスプーンで静かに混ぜ合わせながら味わうのが、ハノイでの嗜み方です。 一口含むと、なめらかで濃厚な卵黄の甘みが広がり、すぐ後からコーヒーのほろ苦さが追いかけてきます。それはまさに、飲むティラミスのような深い満足感を与えてくれます。 ベトナムで育つコーヒー豆の多くは、ロブスタ種やその系譜を継ぐカティモール種です。炉火園 ROKAENが扱うダラット産のカティモール種も、アーモンドのような香ばしさとどっしりとしたコクを備えています。その力強い風味が、コンデンスミルクの甘さに負けることなく、一杯の輪郭をはっきりと保ちます。
秋の朝、窓から入る光が少し柔らかくなったと感じる日に。 お湯を沸かし、卵を泡立てるその静かな時間が、あなたの一日を丁寧に整えてくれるはずです。
贈りものの組み合わせは、ご用途に合わせてご相談いただけます。
よくあるご質問
ハンドミキサーがないと作れませんか?
手動の泡立て器でも作ることができますが、空気を十分に抱き込ませて「もったり」としたクリーム状にするまでに数分間混ぜ続ける必要があります。小型のミルクフォーマーがあると便利です。
コーヒーは普通のドリップバッグでもよいですか?
はい、お使いいただけます。甘いクリームとの対比を楽しむために、お湯の量を120mlほどに控え、通常よりも濃いめに抽出するのが美味しく仕上げるコツです。
ベトナムコーヒーの専用フィルター(フィン)は必要ですか?
専用フィルターは必ずしも必要ありません。普段お使いのペーパードリップやインスタントコーヒーでも代用できます。大切なのは、コーヒーの苦味をしっかりと引き出すことです。